最近、保育業界に関する厳しいニュースが続いています。保育園の半数以上が業績悪化、倒産件数も過去最多ペース…こんな話を聞くと、現場で働く職員の皆さんも「うちの園は大丈夫?」「私たちの将来はどうなるの?」と不安になってしまいますよね。でも、そんな時こそ現場リーダーの出番です。厳しい現実を受け止めつつ、職員の皆さんと一緒に前向きに歩んでいく方法を一緒に考えてみましょう。
現場リーダーの一番大切な役割
業界が厳しい時だからこそ、職員の皆さんの不安を取り除き、「みんなで乗り越えていこう」という前向きな気持ちを育てること。それが現場リーダーの最も重要な使命です。
業界の厳しい現実を職員にどう伝えるか
「隠す」より「一緒に考える」姿勢で
帝国データバンクの調査によると、保育園の54.3%が業績悪化、倒産件数も前年比7割増という厳しい現実があります。でも、この情報をどう伝えるかが重要です。
・正直に現状を共有:隠さずに、業界全体の状況を説明する
・「でも、私たちは違う」を伝える:自分たちの園の強みや安定性も併せて話す
・具体的な対策も一緒に:「だから、こういう取り組みをしていこう」まで含める
・職員の意見も聞く:「皆さんはどう思いますか?」と問いかける
職員会議での効果的な伝え方
避けたい伝え方:
・「保育園がたくさん潰れているから、みんなも頑張って」
・「業界が厳しいから、給料アップは難しい」
・「いつどうなるか分からないから、覚悟しておいて」
結果:職員の不安が増大
安心感を与える伝え方:
・「業界は厳しいけれど、私たちの園は〇〇という強みがある」
・「こういう状況だからこそ、みんなの力が必要」
・「一緒に工夫して、より良い園を作っていこう」
結果:チーム一丸となって頑張る気持ちに
職員の不安を解消し、安心感を提供する方法
職員の皆さんが感じる不安は、主に「仕事を失うかもしれない」「給料が下がるかもしれない」「将来が見えない」といったものです。この不安を一つずつ丁寧に解消していくことが、現場リーダーとしての大切な仕事です。
- 個別面談で一人ひとりの不安を聞く
月1回の個別面談で聞くこと:
・「最近、何か心配なことはありますか?」
・「業界のニュースを見て、どう感じますか?」
・「園の将来について、不安はありますか?」
・「どんなサポートがあったら安心できますか?」
時間:一人15-20分程度
面談で伝えるべきこと:
・その職員の良いところ、園での価値を具体的に伝える
・園の安定性や将来計画を分かりやすく説明
・「あなたは大切な仲間」というメッセージ
・具体的な成長支援策を一緒に考える
効果:安心感と所属意識の向上
- 透明性のある情報共有で信頼関係を築く
・園の経営状況:可能な範囲で園の安定性を数字で説明
・改善への取り組み:「こんな工夫をして、経営を安定させています」
・将来計画:「来年はこういうことを予定しています」
・職員への投資:「皆さんのスキルアップにこれだけ投資します」
変化をポジティブに捉える職場づくり
「ピンチ」を「チャンス」に変える発想転換
業界が厳しい時こそ、実は成長のチャンスでもあります。この考え方を職員の皆さんと共有しましょう。
・競合園の閉園:→ 私たちの園が選ばれる機会が増える
・人材不足:→ 一人ひとりのスキルが重要になり、成長機会が増える
・保護者の要求向上:→ より質の高い保育を提供するレベルアップの機会
・ICT化の必要性:→ 新しいスキルを身につけて、仕事が楽になる
成功事例の共有で前向きな気持ちを育てる
週1回の「良いことシェア」:
・「今週、職員が頑張ったこと」を発表
・「保護者から褒められたこと」を共有
・「子どもたちの成長エピソード」を話し合い
・「うまくいった新しい取り組み」を報告
時間:朝礼で5分程度
効果:
・職員の自信とやりがいが向上
・「私たちは良い仕事をしている」という実感
・チーム全体の士気向上
・前向きな職場雰囲気の醸成
結果:変化を恐れず、挑戦する気持ちが育つ
チーム結束を高める具体的な取り組み
困難な時期だからこそ、職員同士の結束力が重要になります。「みんなで一緒に頑張ろう」という気持ちを育てるための具体的な取り組みを考えてみましょう。
- 「チーム〇〇園」の意識を高める取り組み
月1回の「チームビルディング活動」:
・みんなでランチを食べながらの意見交換
・職員同士の「ありがとう」メッセージ交換
・園の目標を一緒に考える時間
・お互いの良いところを認め合う時間
予算:月3,000-5,000円程度
チーム力向上の効果:
・職員同士の信頼関係が深まる
・「困った時はお互い様」の文化が生まれる
・園への愛着と誇りが育つ
・離職率の低下
結果:結束の強いチームに成長
- 職員の絆を深める日常的な工夫
・朝の挨拶:一人ひとりに「おはよう、今日もよろしく」と声をかける
・感謝の伝達:職員の良い行動を見つけたら、その場で具体的に褒める
・相談しやすい雰囲気:「何でも話して」と日常的に声をかける
・成長の共有:職員の成長を見つけたら、みんなで喜び合う
職員のモチベーション維持・向上策
「やりがい」を感じられる職場環境づくり
給料面での改善が難しい時期だからこそ、精神的な満足度を高めることが重要です。
・成長実感:「去年より上達したね」と具体的に成長を認める
・役割の明確化:「あなたにしかできない仕事」を伝える
・裁量権の付与:「この件はお任せします」と信頼を示す
・将来への展望:「将来はこんな活躍を期待しています」と道筋を示す
小さな報酬制度でモチベーションアップ
今月からできる報酬制度:
・「今月のMVP」を選んで、みんなで拍手
・頑張った職員に「お疲れ様コーヒー」をプレゼント
・良いアイデアを出した人に「アイデア賞」
・誕生日には手作りカードでお祝い
予算:月2,000-3,000円程度
効果:
・「認められている」という実感
・「頑張れば褒められる」というモチベーション
・職場の温かい雰囲気づくり
・お金以外の満足度向上
結果:やる気の向上と定着率アップ
困難な時期を一緒に乗り越える現場リーダーシップ
リーダーとして示すべき姿勢
職員の皆さんが「この人について行きたい」と思えるリーダーシップを発揮しましょう。
・率先垂範:自分が一番頑張っている姿を見せる
・責任感:困った時は「私が何とかします」と頼りになる存在に
・公平性:誰に対しても平等に接し、えこひいきをしない
・成長志向:「一緒に成長していこう」という前向きな姿勢
危機の時こそ発揮すべきリーダーシップ
職員が不安な時のリーダーの行動:
・まず職員の話をじっくり聞く
・「一緒に考えよう」という姿勢を示す
・具体的な解決策を一緒に見つけ出す
・「必ず乗り越えられる」という確信を伝える
心構え:職員の不安を受け止める器の大きさ
チーム全体を引っ張る時のポイント:
・明確な方向性を示す(「私たちはこの道を行く」)
・小さな成功を積み重ねて自信をつけさせる
・困難な時こそ、ユーモアを忘れずに
・「みんなでやれば大丈夫」という雰囲気作り
効果:チーム全体のパワーアップ
前向きな職場文化の醸成
「愚痴より改善」の文化を作る
厳しい状況だからこそ、ネガティブな雰囲気に流されず、建設的な職場文化を育てましょう。
・問題発見型より解決志向:「どうすれば良くなるか」を一緒に考える
・失敗を学びに:「うまくいかなかった時は、みんなで改善策を考えよう」
・感謝の習慣:毎日、お互いに「ありがとう」を伝え合う
・成長の実感:「今日学んだこと」を共有する時間を作る
持続可能な職場改善の仕組み
週1回の「改善ミーティング」:
・今週良かったことを3つずつ発表
・改善したいことを1つずつ提案
・来週試してみたいことを話し合い
・お互いの頑張りを認め合う時間
時間:30分程度
継続的改善の効果:
・職員のアイデアが活かされる職場
・小さな改善の積み重ねで大きな変化
・「自分たちで職場を良くしている」という実感
・前向きな職場文化の定着
結果:どんな困難も乗り越えられるチームに
保育業界が厳しい状況にある今だからこそ、現場リーダーの役割がとても重要になっています。職員の皆さんの不安を取り除き、一緒に前向きに歩んでいく。そんなリーダーシップを発揮することで、どんな困難な時代も乗り越えていけるはずです。
結論
大切なのは、一人で背負い込まず、職員の皆さんと一緒に考え、一緒に成長していくこと。「みんなでやれば大丈夫」という気持ちを育てながら、子どもたちにとって最高の保育環境を作り続けていきましょう。変化の時代だからこそ、現場リーダーの温かいリーダーシップが求められています。
「文責 幼稚園経営コンサルタント 安堂達也」