講師略歴
岡 まゆみ [おか まゆみ]
子ども安全講師、大阪大学大学院人間学研究科 特任研究員、大阪総合保育大学 非常勤講師。
奈良女子大を卒業後、就職・結婚・出産を経て中学高校の国語科教員として勤務。2012年、偶然子どもの水難に遭遇し救助に入った夫が、その際に死亡。事故現場における安全対策を行政に訴えるも、相手にされず無力さを思い知らされ一念奮起して専門家の道へ。翌年、シングルで2児の子育てをしながら大阪大学大学院に進学。子どもの事故予防で修士課程を修了後、啓発と情報発信を精力的に展開する。現在は研究者としての専門的立場を強みに、子どもの事故予防や保育事故予防、保育の安全意識の向上について講演や研修を精力的に活動中。資格は、中学・高校国語科第一種教員免許。メディア出演に、 NHK、フジテレビ、TBS、ABC 放送他取材多数。
岡まゆみがお届けする研修プログラム
⑤保健衛生・安全対策
- ●水遊びとプールの事故予防対策
- ●事故を防ぐ子どもに届く声掛け方法
- ●リスクいっぱい園外保育の事故予防
- ●チャイルドビジョンで園内危険回避
- ●子どもはなぜ飛び出すのか 他
⑧マネジメント
- ●保育事故こんなときどうする?
- ●ヒヤリハットで保育事故を予防する
- ●事故防止マニュアルの読み方
- ●保育者の安全意識を高める
- ●判例に学ぶ保育事故予防 他
研修受講者の声
事故を起こした園も起こしたくて起こしているわけではない。
1 無我夢中で救いを求めて。それが研究の始まりでした。
10年前に夫を川の事故で亡くしました。そこで事故ってこんなに簡単に起きてしまうんだということと、本当にあっという間に命が失われてしまったということを経験し、事故って何かな?ということを考えました。
どこか勉強できる所はないかと思い、大学を探し始めたら、社会人経験者を大学院で受け入れている大学がありました。当時はもうとにかく無我夢中というか何か自分の救いになるものを求めていたので、「事故について考えたいんです!」みたいな、すごく漠然とした気持ちで教授にお話を聞きに行きました。その時「研究室で、子どもの事故について研究していこうと思っている。ご主人がお子さんを助けて亡くなったし、岡さんも教職に就いているから、子どもの事故について研究してみたらどうか」とご提案いただいて。そこから研究を始めたというのが始まりです。
2 事故を起こした園も起こしたくて起こしているわけではない。
自分が夫の事故を経験して、テレビの中で起きていると思っていたことが身近に降りかかることがあるんだということ、大学に行って勉強して事故事例を色々調べていくうちに、ご遺族にヒアリングをさせていただくと、事故に遭って悲しい思いをされている方がこんなにもいるということが、すごくよく分かりました。
日常では、やっぱり皆さんは自分には事故は起こらないとか、自分の保育、幼稚園と保育園の中では起きないっていう風にぼんやり思っていると思うんですよね。実際事故が起きた報道があると、「うちの園も気をつけないと。でもうちは今のところ大丈夫。」と多くの方が思われると思います。でも、そうではなくて、事故は気を付けていても起きることがあるし、事故を起こした園も、事故を起こしたくて起こしている園なんて一園もないんです。そういったところにもう少し意識を高めていただきたいというか、自分の園にも起こり得るっていう風に思っていただきたいなと思いながら講座ではお話ししています。
3 最悪の事態を考えると対策が見えてきます。
自分の見ている子どもにも事故は起こり得ると思っていただきたいなと思っています。起こそうと思って事故を起こしている園は一つもないということ。
それから、講座ではいつも、「最悪の事態を考えて行動してください」ということを伝えています。最悪の事態というのは園児が死ぬということです。縁起でもない!考えることも恐ろしいと思うかもしれません。でも、園児を絶対に死なせない!と思って保育をすると、「じゃあこうすればいいんじゃないか、ああすればいいんじゃないか」という対策が見えてくると思います。
私が仕事の上で大事にしていることは、評論家とかコンサルだけの仕事にならないようにということです。やっぱり事故予防って心から考えて、意識を高めなければいけないので、講座は私と受講者の方々が同じ目線でお話をしているイメージ、一緒に事故を防いでいこう、という感じですね。
あとは、なるべく数字を出すことや事故事例をあげるようにしています。数字でいうと何人亡くなっているとか何月に多いとか、今出ている根拠のある数字をお伝えすると、そうなんだって思っていただけますよね。実際の事故事例や裁判例などを挙げながらお伝えするようにしています。
4 事故について深く考えていただけることにすごくやりがいを感じます。
講演後は「知らなかったことを知りました」と言ってくれる、感想に書いてくださる方が多いです。事故予防や保育において怪我を防ぐということは先生方にとっては当たり前の日常のことですけど、座学として学ぶ機会が非常に少ないと思います。その機会を作って、私の話を聞くことで事故について深く考えること。その時だけでもその講座の中だけでもいいので、まず考えていただけるようになるっていうことにやりがいを感じます。もしかしたら命が救われている子どもたちがいるのかなと思うと、今の活動を続けていきたいと思います。
でも、事故の話をすすんで聞きたいという人は少ないですよね。ネガティブですからね。だから事故の話を聞きたいっていう人は、意識の高い人なのだと思います。でも本当は、事故なんて自分に起きないと思っている人、普段事故を意識していない人にこそ、聞いてもらいたいです。
5 防げる事故を防げるよう皆が意識を高めて知識をもってほしいです。
講座の中で“チャイルドビジョン”といって子どもの視野が体験できるペーパークラフトのようなメガネをお配りしています。それをかけると子どもの視野が狭いのが疑似体験できます。それを配ると、受講者の方々は自分から積極的に子どもの視野になって遊具で遊んでみたり、何がどう見えるのか、見えづらいのかとかいうのを自分から探そうとしたりしてくれます。子どもがどこで頭をぶつけるのかが理解できたとか、ご自身の保育と照らし合わせて熱心に取り組んでくれる先生方を凄いと思います。毎回、先生方の驚きとか「勉強になりました」という声が私のやりがいになっています。
事故がこれ以上増えないで欲しいと思っているのですが、増えていくんですよね。この間も広島で園児が園から抜け出してしまって川に転落していたという事故もありました。そういう時、また研修でお話しなければならないことが起こってしまった…と、とても残念で悲しいです。講座でお伝えする事故事例が増えないで欲しいと思っています。本当に事故を減らしたい。隕石が落ちてきたみたいなどうしようもない事故は防げないと思うんですが、防げる事故を防げるように皆が意識を高めて知識をもってほしいなと思います。